地球温暖化対策基本法がザル法になった

地球温暖化対策基本法は、官僚・産業界・労働組合による猛烈な巻き返しで骨抜きにされ、いまや見る影もない。

地球温暖化防止は、我々の世代が将来世代のためにやらなければならない課題である。

民主党政権は、マニフェストでキャップ・アンド・トレード方式の国内排出量取引市場創設をうたっていたはずだ。

しかし政府の姿勢はぶれ始め、地球温暖化対策基本法は、実質的にキャップのない「排出量取引制度」というザル法になってしまった。

温室効果ガスの25%削減という中期目標を成し遂げるには、「総量規制方式(温室効果ガスの排出量の上限を課す)」が排出量取引制度の根幹であるはずなのに、産業界が求めた「原単位方式(生産量当たりの排出量規制)」が抜け穴として盛り込まれたからだ。

経済活動に応じて排出枠を決める「原単位」を法案に盛り込もうと動いたのは、キャップを嫌う電力と鉄鋼などエネルギー多消費産業の業界団体や労働組合だ。彼らにとって「総量」はきついのだろう。

だが、経済活動が盛んになれば、それに応じて排出量も増える。温室効果ガスの総量規制につながらない。

キャップと国際競争力の強化を結び付けることは、国の経済構造を変えるためにも必要である。また長期的に排出量を9割減らさなければならないとすれば、キャップによる総量規制に頼らざるを得ない。

環境NGOからは、「目標に総量と原単位が混在しており、原単位目標容認では総量削減の担保ができない」「産業界の全体的な排出量が増加するのを認めることになる」などと批判されている。

経済界からも、原単位方式に反対する声があがっている。総量規制を支持する経済同友会の桜井正光代表幹事は、「絶対に総量規制でいくべきだ」との考えを示した。

原単位方式だと、経済成長率、売上高、生産量の増減によって温室効果ガスの排出量が左右されることになり、「地球が求めているのは、効率の向上ではなく、総量をいくらで止めてくれるか」だと明確に語っている。

さらに日本が、原単位で排出権取引をやることになれば、(国家目標として原単位を主張している)中国に「原単位とはなんたることか」と意見する矛盾が出るため、中国に対する説得力がなくなると主張している。

総量規制による企業の負担についても「企業は技術革新で乗り越えられる。対応できない業種業態については別に議論すべきだ」との考えを示している。

真面目に低炭素社会に取り組もうとしている企業や国民の意思を、このザル法が台無しにしてしまう。「経済と環境の両立」という口実はもうやめるべきである。

地球環境の維持を前提とした新しい経済を目指すべきだ。