借金民主主義の破綻

「反緊縮財政」の世論を受けて、ギリシャは、政治混乱となり、ユーロ離脱が現実味を帯びてきた。ギリシャがユーロ離脱をすれば、南欧諸国にも波及し、ユーロ崩壊となる。世界経済は、リーマンショック以上の深刻な世界恐慌となり、大量の失業者を生み出す。

ギリシャが、ユーロ離脱しても、通貨暴落で超インフレに陥る。「緊縮財政」、「反緊縮財政」のどちらに転んでも、奈落の底である。ギリシャは、必要な税金を徴収せず、借金ばかりを重ねて、福祉国家を維持するための借金民主主義で崩壊した。

ギリシャ以上の借金依存度の高い日本も、ギリシャ債務危機を目の当たりにして、最近の世論調査では、消費税賛成派が増えてきた。それにもかかわらず、アウトサイダーである小沢一郎や橋下大阪市長のように政治家は、選挙が近づくと、人気取りのため、増税の必要がない成長重視を唱え始める。成長につながる具体的な政策など、ないにもかかわらずだ。

まともな成長政策などないため、結局は、裏ルートの日銀だけが応急措置で、不良債券化した社債国債を買う羽目になる。日銀が国の借金肩代わりを続けている。日銀の信用不安にもつながりかねない。

増税を避けてきた結果、政府債務残高は、GDPの2倍強となった。過去二十年間平均で、国債金利が、成長率を2%上回っているからだ。同じ間違いの繰り返しで、政治は袋小路状態になり、財政は持続不可能になっている。

政府債務が増大する一方で、貯蓄率は、下降傾向である。高齢化社会で、貯蓄を取り崩しているからである。政府の総債務は、家計部門の金融純資産に迫っており、国内における国債消化余力がなくなっている。

日本政府の借金依存度は、ギリシャ以上で、先進国で最悪である。社会保障費が膨らむのも分かっていたはずなのに、増税問題を後回した。歴代政権の中で、小泉政権は、増税問題をテーマとすべきであったのに、郵政民営化という不適切なテーマを持ち出し、消費税増税を封印した。 

民主政治は、緊急事態に何にも対応できす、政策はお粗末極まりない。選挙のことしか考えない政治家は、金融システムの危機的状況に無知であるため、最悪の結果を招いている。

消費税を20%以上にしないと、膨大な政府の総債務を解消することはできない。これには、国民は反対し容認しないであろう。結局、政府の借金は、返済不可能となり、政府はデフォルトに追い込まれるだけだ。

手順を重視する民主主義は、巨大化した市場の速さに追いつけない。借金が民主主義を支配しているからだ。

社会を統治しているのは誰か。国民から選ばれた政府ではなく、正体の見えない市場という魔物である。多くの民主主義国で、借金のため、予算が削られ、福祉や教育が後退し失業者が増えている。今や民主主義が闘う相手は、借金であって金融市場なのである。

借用書(ローン債権)が証券化で商売になること自体、虚業・虚像の経済であって、破綻するに決まっている。そんな資本主義経済はいずれ崩壊する。