NPO税制が来年度から大幅拡充

教育や街づくり、福祉などを担うNPO法人の活動を支援する「寄付税制」が、来年度から大幅に拡充される。

「寄付税制」の見直しがようやく始まった。新たな目玉として「税額控除」が導入された。

国が認定したNPO法人に寄付した額に応じて、一定額を所得税から差し引く制度である。寄付金の半額が「税額控除」の対象になる。

現行の制度は、2千円を超えた寄付額を所得税の課税所得から差し引く「所得控除」である。しかしこれだと、課税される所得税率の高い高所得層ほど恩恵が大きく、税率の低い中低所得者の恩恵は少ない仕組みになっていた。

これに対し、新設の「税額控除」は寄付金から差し引いた控除額を所得税額から直接差し引くため、納税額が少ない中低所得層でも優遇措置を受けやすくなる。

硬直化した行政サービスに代わる「新しい公共」を唱える鳩山首相は、「税額控除は、市民と政府(の負担)もフィフティー・フィフティー(50%対50%)がいい」とめずらしくリーダーシップをみせた。

税と寄付金による二段構えで社会保障を負担するというわけだ。さらにNPO以外の学校法人や、社会福祉法人などへの寄付にも「税額控除」を認める方向で検討するとしている。

新しい公共」には、教育や医療、介護など「官」が担ってきた公共サービスの一部を、NPO法人などに委ね、地域社会の再生や「官」のスリム化につなげる狙いがある。

しかし「新しい公共」の担い手であるNPO法人の資金力を高めるには、認定NPO法人の認定基準を緩和する必要があった。

今回、「仮認定制度の導入」や「認定基準の見直し」などの認定基準を緩和させる方針が盛り込まれたことから、認定NPO法人数の大幅な拡大が期待できる。

だが認定だけで無条件に寄付が増えるわけではない。NPO法人の営業努力も必要である。

これまでNPO法人に対する認定基準のハードルが高かったのは、国が脱税防止の観点から、強い監視を行ってきた経緯がある。

また市民にも、中身が不透明なNPO法人には寄付しない不信感があった。寄付に値する信用に置けるNPO法人の数が少ないからだ。

さらに寄付をする法人は、NPOに対し「手ごたえのある投資効果」を求めてくるため、寄付集めがより困難になっている。

これらに対して、寄付を集めるNPOには、寄付者に対してその資金使途を明らかにする説明責任が求められている。

多くのNPOには、市民との連帯がなく、「市民参加」からほど遠い実態がある。市民社会を担うには非力すぎるNPOの質を向上させる政策が必要だ。

そのためには、中間支援組織や行政などの第三者による客観的な評価と、透明性の高い情報公開で望ましいNPO像を市民に提示していくことが重要だ。

社会を支える寄付文化に発展させるには、まだまだ乗り越えなければならない数多くのハードルが残されている。