沖縄密約判決と情報公開制度見直し

沖縄返還に絡む「密約文書」の全面開示を国に命じた東京地裁判決は、画期的であった。

「密約文書」は、米国が負担すべき米軍用地の原状回復費用400万ドルを日本側が肩代わりした事実を示す文書をはじめ、国民の血税を不当に支出した「背信行為」を裏付ける文書などだ。

「密約文書」にサインした当事者の証言から「存在すること」が裏付けられた文書を保有してきたはずの外務省に対し、文書を破棄したことの立証責任を求めたのだ。

「情報公開」が最も難しい外交や防衛にかかわる問題で、「国民の知る権利」をないがしろにする外務省の対応は不誠実であると断じた。

外交機密を盾にウソをつき続けてきた歴代政府は、主権者を見下して説明責任を放棄したまま背信行為を繰り返してきた。

機密の外交文書は一定の年月が過ぎたら国民に「情報公開」されるべきなのに、文書管理の責任を放棄し、将来の国民に対する説明責任も果たしていない。

「密約文書」の廃棄は「情報公開法」の施行直前だった可能性が大きいとされている。不都合な情報を隠す官僚の悪弊は国民を愚弄するものだ。

他方で、説明責任を放棄したまま根拠なく否定を続ける政府や外務省の体質を十分に追及してこなかったメディアの報道姿勢にも責任が問われる。

今回の判決は、国の情報に対する「隠ぺい体質」を厳しく批判した。「国民の知る権利」を重視した意義は大きい。

枝野行政刷新相が、国民の行政参加を促す観点から情報公開制度の抜本的見直しに着手した。

情報公開を巡る訴訟の際、不開示と決定された文書や黒塗り部分を裁判官が直接読み、開示の是非を判断できるようにする制度の導入が柱になっている。

また法律の目的として「国民の知る権利」を明記する。改正案は6月中にまとめ、早ければ秋の臨時国会に情報公開法改正案を提出する見通しだ。

現行法では、情報公開の可否を文書の所管省庁の大臣、実質的には官僚に委ねる仕組みになっている。

これに対し、改正案素案では、裁判で裁判官が直接、不開示の文書や情報の中身を見たうえで、開示の可否を判断できる「インカメラ審査」を採用する。大臣ら行政側だけでなく、裁判官が実質的な判断に加わることで、公開の範囲を広げる狙いがあるという。

また年金記録問題などずさんな公文書の管理が明らかとなったことから、「文書管理法」が来年から施行される。

公文書は官僚の所有物ではない。国民共有の知的資源だ。

情報を生かすも殺すも市民の意識次第である。官僚の意識改革は、「情報公開」と「市民参加」の促進なくしてはあり得ない。